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        2010-12-31        2009-2010年ベスト(4):長編

今年はいくつかの素晴らしい長編アニメーションと出会えましたのでピックアップ。

イリュージョニスト』(シルヴァン・ショメ)
The Illusionist (Sylvain Chomet)


illusionist

これは紛れもない傑作です。魔術・驚異としてのアニメーションが力を失って随分と長い時間が経ってしまった気がします。(あれだけ素晴らしい『ポムネンカ』がサラッと流されてしまった現状をどうしましょう?)アニメーションがこれだけ「当たり前」となった時代なのだから、仕方ないことなのかもしれません。今さらそんなこと言われてもね、という感じなのかも。タチの遺稿を原作として作られたシルヴァン・ショメのこの新作長編は、なんというか、魔術としてのアニメーションに最後の別れを告げるかのような、そんな作品となっているように思えました。時代遅れの奇術師と、彼の奇術を魔法だと信じる田舎育ちの純粋な少女の物語。奇術師が背負う極めて緩慢とした、歴史性を担った時間と、少女が女へと成長していく残酷なまでに素早く流れゆく時間。最終的には違う道を行かざるを得ないこの2つの異なる時間がマッチする一時を描く物語です。魔術にはタネがあるわけですが、本当の魔術とはそれを分かっていたとしても、それでもなお驚きを与えてくれるものだと思います。『イリュージョニスト』は、年老いて人気もなくなった奇術師の姿を通じて、魔術の時代の終わりをこれでもかと見せつけながら、最後、その驚異を再び蘇らせるのです。映画の終盤に誰にも目撃されぬところで起こるちょっとした奇跡に息を呑みます。もちろんこれだったタネがある。仕掛けがある。仕掛けは画面上に映っている。それがトリックだと分かっている。それでもなお、驚異がある。この時代に、魔術としてのアニメーションの持つ原初的な輝きを、このたった一瞬でも取り戻すことができたショメは実に素晴らしい仕事をやってのけたといえます。魔術にはタネも仕掛けもあることをみなが認識してしまい、そこを問題としなくなった時代。つまり、みながアニメーションに対して「大人」になってしまった時代の今だからこそ、最も威力を発揮する作品です。2011年日本公開です。万人必見。

緑子 MIDORI-KO』(黒坂圭太)

midori-ko

小さな頃、たとえば東映マンガまつりとか、まあ、ディズニーとかでもいいんですけど、アニメーションを観ることで異様なドキドキ感を味わったことってあったと思います。『イリュージョニスト』の話とちょっとかぶってますけど。普通の映画やドラマと違う、なんとも名状しがたい、不思議なことが起こっているなあ、という感覚です。世界がまだまだ新鮮だった頃のアニメーション体験で得られるもの。それを与えてくれるのが黒坂圭太待望の長編『緑子』です。ノルシュテイン『外套』と並んで、「いつ完成するんだよ?」アニメーションのトップ2だったわけですが、ついに完成したのです。予告編には「現代の偽善を笑う」というフレーズが使われていますけど、ほんと、あらゆる虚飾が取り払われて、これを見終わった後にはナチュラルな気分になれます。身体の奥底の部分が解放されるというか。限りなくユニークな長編です。現代のカーニバル!!

Goodbye, Mister Christies (Phil Mulloy)

goodbyemister

『緑子』と同じく個人長編作品からもう一本。フィル・ムロイの長編第二作Goodbye, Mister Christiesは、観ていて恐怖を感じました。タイトルからお分かりのように、究極のミニマル長編The Christiesの続編です。前作に比べれば切り絵のバリエーションは増えてますけど、基本路線は同じです。黒シルエット、単純な背景で展開される、コンピューター・ボイスによる無限の会話劇です。今作ではミス・クリスティーがフランス人船乗りの魔力の支配下に置かれて不倫をし、ミスター・クリスティーもまた、犬のバスターがテレビ取材を受けている最中にまたしてもフランス人船乗りの魔術によってイチモツを晒すことにより、全世界的な有名人となります。彼の人格崩壊は、世界の崩壊と運命をともにします。なんというか、この長編って何なのでしょうか? 普通、長編って、多くの人が関わったりたくさんのお金が絡んでくるわけで、やはりなるべく多くの人間に向けて作られるわけなんですけど、ムロイのこの長編はどうなんでしょう? 個人制作の長編はSita Sings the Bluesとかプリンプトンとかありますけど、そういった作品だって、やはり多くの人に見てもらうための努力を制作中・制作後と行っているわけですけど、じゃあこの長編はどうなんでしょう? 特に誰に向けて作られたものではないもののように思えたのです。恐怖を感じたのはそこです。目的がわからない……悪ふざけにしてはやりすぎな気がする……内容自体も背筋の凍る笑いを提供してくれます。UP & DOWN, UP & DOWN...

ここまでの三作はすべてオタワの長編コンペに入っていたものですが、
もう一本、注目すべきものがありました。

Gravity Was Everywhere Back Then (Brent Green)

gravity

独学のアニメーション作家ブレント・グリーンによる、全編ロトスコープの長編です。交通事故によって運命的に出会ったレオナルドとメアリーの夫婦。しかしメアリーはガンに冒される。夫は、妻を救うために、自宅の庭に巨大な治療装置を建てはじめます。「そのとき、重力は偏在した」。タイトルにもなっているこのセリフは、妻の死後も治療装置としての塔を建てつづけたレオナルドが、その塔から落下し、死を迎えたときにつぶやかれるものです。重力に逆らって塔を天へと伸ばしつづけること。この行為が象徴するように、この映画は、運命(gravity)に抵抗するという、負けることしかありえない戦いを一生涯続けた男の、泣きの物語です。質的にはもちろん高くないですが、ロトスコープのコマとコマの間から滲み出るエモーションがすさまじいです。アニメーションにもローファイという概念があてはまるのだという発見が、この映画にはあります。この長編をアニメーション映画祭でピックアップしたオタワはやっぱりエラい。

これで今年のベストについてのエントリは終わろうと思います。
他にも、選外佳作的にいくつかの作品について書こうと思ったのですが、もう年が終わってしまうこともありますし、これから執筆にとりかかるフェスティバル・レポートでもカバーできるだろうということで、省略します。いくつか作品名だけ挙げておくと、長編ではウェス・アンダーソンの初アニメーション長編『ファンタスティック・ミスター・フォックス』(これも劇場公開が決まったようですね。人形に対する乾いた愛と距離感が素晴らしい映画でした)、短編だとブラザーズ・クエイの新作Mask(クエイの作品でナラティブが機能した希有な例)、あとは不当に評価が低いように思える水江未来『MODERN』(素晴らしく先鋭的な抽象作品だと思いました)なんかについて本当なら書きたかったのですが、また来年ということで。

来年は、このブログでも紹介したいくつかの長編が一挙に日本公開となるようで(『メアリー&マックス』『イリュージョニスト』『ファンタスティック・ミスター・フォックス』……『緑子』やシュヴァンクマイエルの新作長編も恵比寿映像祭で観れます。)、長編がちょっと盛り上がる年になりそうです。短編では、山村浩二の新作が完成し、ウェンディ・ティルビー&アマンダ・フォービスの新作も完成したという噂をききますし、ドリエセンも来年が完成目標といってましたし、NFB作品が盛り上がりを見せそうな気配です。タレント揃いの藝大二期生の修了制作も楽しみ。広島はないですけど、来年もまた日本で、インディペンデント・アニメーション・シーンが盛り上がるといいですね。

それではよいお年を。

土居

        2010-12-31        2009-2010年ベスト(3):学生作品

続いて学生作品をピックアップ。

『ミラマーレ』(ミカエラ・ミュラー)
Miramare (Michaela Müller)


miramare02

今年のアヌシーの学生コンペはとても面白かったです。おそらく一般コンペ以上に。皮肉なもんですが、学生コンペの方がアプローチも語り方も多様なんですよね。質はともかくとして。そのなかでも一番光っているように僕には思われたのが、ミカエラ・ミュラーの『ミラマーレ』でした。この作品もまた広島では落ちましたけど、「和田淳と世界のアニメーション」で上映できましたからご覧になったかたも多いと思います。ガラス上ペイントというクラシックな技法を用いていますが、なんでしょうか、この新鮮な感じは。ラストシーンの夜の美しさには息を呑みます。今まで観たことのない色調というか。フォークナーの短編で、どの物語かは忘れたのですが、納屋か小屋かが火事になるシーンがありまして、その描写を読んでいるとき、脳内にきわめてキレイな色調の炎が現れたんです。いや、あれは夕暮れの色だったか……まあ、どちらでもいいんですけど。別にフォークナーじゃなくてもいい。そのとき思ったのは、アニメーションってなぜか色彩描写の鮮やかさにおいて小説に負けることが多々あるなあ、ということでした。でも、このアニメーションは違いました。そのフォークナーの炎を思い出したのです。ああ、これだった、と。未知なるものを内包した感覚があったんです。浜辺にレジャーにやってきた中流階級の家族。その姉と弟が立ち入り禁止の区域に入ってしまうことによって出くわす違法な移民たち。ひとつの境界線を隔てて存在する、天国と地獄の2つの世界。常にメタモルフォーゼを繰り返さざるを得ないこの技法とぴったり一致するように、物語の描き方は非常に朧げです。人によってはそこを失敗だと判断する人もいるでしょうし、アニメーション・パート自体もあまりうまくないという人も多いです。意図通りではなく、偶然美しくなってしまった作品なんじゃないかという見方もあります。しかしそれでも、この作品を観ているあいだ、僕がずっと息を呑みつづけてしまったという事実は変わりません。ミュラーにとってこの作品は初めての作品。それゆえの拙さ、制御のきかなさが生み出してしまった偶然の産物なのかもしれませんが、それでも、僕はこの枠に収まりきらぬなにものかを底に秘めたこの作品を擁護します。


『くちゃお』(奥田昌輝

gumboy

この作品を初めてみたとき、本当に学生作品なのか、目を疑いました。『オーケストラ』によって鮮烈なデビューを果たした奥田&大川原。(もう一人の監督小川雄太郎はポスターデザイナーです。)大川原亮の『ANIMAL DANCE』は去年の学生ベストのひとつに挙げさせてもらいましたが、今年は奥田昌輝の番です。アニマドリードやファントーシュ、クロクなどで大きな賞を受賞しているこの作品、山村浩二や岡本忠成の影響は存分に伺えますが、かなり意識的にやっているようにも思えます。ユーモアと残酷さの配分が非常に意地悪でお見事。『オーケストラ』以上に、エンターテインメントに徹することができているような。2010年は東京藝大のアニメーション専攻が初めて修了制作作品を送り出した年でした。ザグレブやオタワで最優秀学校賞を取るなど、映画祭シーンに与えたインパクトは非常に大きかったです。海外短編・映画祭の文脈を明確に意識したものが多かったわけですが、『くちゃお』はそんな学校を象徴するような作品だったとも思います。

『オルソリャ』(ヴェラ・セデルケニイ)
Orsolya (Bella Szederkenyi)


orsolya

アヌシーの学生部門で『ミラマーレ』と並んで感動的だったこの作品も「和田淳と世界のアニメーション」で上映させてもらいました。トーリル・コーヴェとアダム・エリオットを同時に思い出す作品でした。自分自身の成り立ちや行く末を俯瞰し、運命を受け入れる態度に前者を。正常であることから外れてしまったことを哀しみと受け入れるのではなく、人間は正常からはみだすものなのだと教えてくれる感じに後者を。根拠ある優しさに溢れたこの作品は、逆立ちして生きることしかできなくなった女性が自分の運命を受け入れるまでの物語を語ります。標準から外れてしまったことによって生まれた出会いの後、ラスト、公園で、女と男が、まるで陰陽のマークのように、互いに補完しあうかのように、寝転んでいたことは偶然ではないはずです。(このラストは、いよいよ日本公開が決まった『メアリーとマックス』のとあるシーンをも思い出させました。)アニメーションは基本的に有機性を根底に置いているがゆえに、そのことに意識的でない表現者はノスタルジーや一体感を時に根拠なく前面に押し出してイヤな気分になりますが、しかし、この作品のそれは、根拠あるものに思えました。

次のエントリでは長編をピックアップします。

土居

        2010-12-30        2009-2010年ベスト(2):短編ii

引き続き今年印象に残った作品をピックアップしていきます。

『ルシア/ルイス』(クリストバル・レオン、ヨアキン・コチナ、ナイルズ・アタラー)
Lucia, Luis, (Cristobal Leon, Joaquin Cocina, Niles Atallah)


lucialuis

今年『わからないブタ』がグランプリを穫ったファントーシュの去年のグランプリが『ルシア』でした。それでウェブ上で作品を観てみたわけですが、かなりの戦慄でした。手法としてはもちろん見慣れたものの組み合わせだけれども、未知なる作品を観てしまった感じに襲われたのです。立体担当のレオン、木炭画担当のコチナ、カメラマンのアタラー、本来展示用に制作されたものでしたが、三人の専門領域が互いにハマりあって、非常に優れた立体アニメーションが出来上がりました。チリという個人的には未知の国からの作品だったのも興味深かったです。(現在レオンはアムステルダムにて制作を行っています。)少女ルシアと野人の少年ルイスの一夏の恋と悲劇的な結末が、両方の視点で語られます。少女の不安げな空想は、ともするとルイスの存在をルシアがひとつのファンタジックな出来事として捉えていることを想像させます。ルイスとは自分の空想の産物なのではないかと。しかしルイスは実在し、消えてしまったルシアに対して呪詛の言葉を投げつける。ウィスパーと怨念。微細でありながら情念に溢れた両者の声。そこにマッチする、立体アニメーションと木炭アニメーションの儚さ。グループワークによって書かれたという脚本は、意図的にtheyの存在を不確定にしてあり、不安感をさらに高めます。その後レオンは(広島でもコンペインした)The Smaller Roomという優れた小品を完成させ、今のところフェスティバル・シーンでは目立っていませんが、コチナもWeathervaneという湿り気のある木炭アニメーションを発表しています。(後者はパヴラートヴァのLailaを思わせるようなコミカルで残酷な小エピソードが重なっていくもので、かなり黒くてべちゃっとした強度があります。)『ルシア/ルイス』という作品だけでなく、作家たちのその後の活躍も含め、非常に印象に残った作品です。

Old Fangs, (Adrien Merigeau, Alan Holly)

oldfangs

今年のアヌシーで観て感銘を受けました。以前でいえば『マロット』、去年でいえば『スキゼン』の列にのっかるような、優れた短編物語映画としてのアニメーションの今年最良の例がこれだと思います。物語は単純で、ひとりの青年が、友人とともに、長いこと離れて暮らしていた父親に会いにいくというものです。かなり粗い作りの作品だと思います。しかし、それを補って余りあるほどの(粗さゆえの?)エモーションに満ちています。登場人物たちはもちろん、動物の皮をかぶった人間です。ノルシュテイン作品がそうであるように、ここにおいても、動物は常にもっともリアリティある人間表現として機能します。実写の使用が印象的です。父親の家のシーンにおけるサイズの誇張、記憶と現実が交差する場面、アニメーション表現だからこそ自然と行き来できる複数のリアリティ。この作品を観る者は、それを追っていくことで、深い、深い記憶の底へと引き込まれていきます。監督の二人組は、昨年話題になった長編The Secret of Kells(未だに観れていない!!)の制作に参加していたそうです。この作品も、その製作スタジオCartoon Saloonの支援を受けています。そういえばオライリーもダブリン時代にKellsのデザイナーかなにかをやっていたような。フランスのSacreblueと並んで、アニメーション界に新風を吹き込んでくれそうなこのスタジオには、引き続き注目していきたいです。

Red-end and the Seemingly Symbiotic Society
(Robin Noorda, Bethany de Forest)


redend

これもアヌシーで観ました。元々は去年のオタワのコンペに入るはずで、クリス・ロビンソンも「今年のナンバーワン」と絶賛していたのですが、どうも完成が間に合わなかったらしく、観ることができませんでした。そんなわけで非常に気になっていた作品だったわけですが、期待以上の面白さでした。なんというか、高密度の『パニック・イン・ザ・ヴィレッジ』というか。そんなふうに思ってしまうのは、人形のぎこちない動かし方によるのでしょうけれども。物語としては、淡々と自分たちの日常業務をこなすアリなどの節足動物たちのなかに突如として現れてしまったひとりのユニークなアリを中心とするものなのですけれども、これはなんなのでしょう、風刺的なものにも思えないのですよね。ところどころにそう読み取れそうな要素も入ってくるのですが。それ以上に、ワクワクとして楽しい感じを受けます。すごくよくできたジオラマに見入ってしまうかのような。名状しがたい魅力を持った不思議な作品です。アヌシーの一度しか観れていないので、再見できたらきちんと書いてみたいと思っています。

冬至 The Winter Solstice (Xi Chen, Xu An)

winter

実際には去年のアヌシーで観ていた思うのですが、そのときはスルーしてしまっていました。今年の広島で印象に残っている方も多いであろうこの作品、中国のインディペンデント界に新たな動きが起こっていることを感じさせるものでありました。Animationsの読者の方なら誰もが思うであろうことーーあれ、これってコヴァリョフじゃない?という疑問。僕も広島にて当然ぶつけてみましたけど、苦笑しながらも強く影響を受けていることを認めてくれました。切り絵手法によるコヴァリョフですから、面白いですけど。(ちなみに次の日には記者会見でオットー・アルダーが同じ質問をしていて、苦笑がさらに強烈になってました。)Lei Leiがオタワで短編部門の最優秀賞を受賞したとき、彼は壇上にて中国はこれから面白くなると言っていました。彼の言葉に信憑性を与えるのが、この作品だと思います。これもまた『ルイス/ルシア』と同じように作品をめぐる状況・現象を含めて、興味深い例として記憶しておきたいものです。監督の片割れチェン・シーは、今年から始まった興味深い試みJAPICのアーティスト・イン・レジデンス・プログラムで1月から3月まで来日し、新作制作を行います。(そういえば、同プログラムで来日するJoseph PierceのA Family Portraitも興味深い作品のひとつでした。)

次のエントリでは学生作品で印象に残ったものをピックアップしていきます。

土居

        2010-12-30        2009-2010年ベスト(1):短編i

2010年は結構いろいろなことがあった年だと思います。
後々振り返ってみると重要な年だったなと認識される気がします。
個人的にもアニメーションズ・フェスティバルとCALF設立という大きな出来事があり、
(個人的なレベルだけでなく大きなことであるのを願うばかりですが)
ブログも含めサイトの方は結構ほっぽらかしたかたちになってしまい申し訳ない気持ちでいっぱいです。
映画祭のレポートも途中で放り出したままになっていたり……

しかし去年やって好評だった今年度のベスト作品についてのエントリは書きます。
ベスト選定というのは本当ならば日々のブログ更新あってこそのものだとは思うのですが、
いつもとは順番が逆になるんだという認識でお願いできればと。
(年明けてから書く映画祭レポに、ベストではないが気になった作品についていろいろと書いていきますので。)

去年は2008-2009年のベストを書きました。
今年は2009-2010年のベストを書きます。
フェスの作品のサイクルがやはり2年単位ということもありますし、
去年触れた作品でも、みなさんにとっては、広島でようやく観れたものも多かったでしょうし、
(実際にはそんなにかぶってなかったりもしますが)
そうします。
一部作品は去年とかぶっていますけど、
今年のフェスティバル・シーンを騒がせた作品のなかから、という理解でお願いします。

それではいきます。

THE EXTERNAL WORLD (David O'Reilly)

EXTERNAL

今年の一本は?と問われたら、迷うことなくこの作品を挙げます。アニメーションズ・フェスでも上映した前作『プリーズ・セイ・サムシング』は世界中の映画祭で話題になり、論議を巻き起こしましたが、この若き3DCGアニメーション作家が繰り出してきた次の手は、かなり挑発的なものでした。単純化されたキャラクターたちが暮らす現実世界とテレビドラマのフォーマットのパロディが入り乱れるこの作品、本人は「エクスペリメンタル・コメディ」と形容してますが、ギャグ自体は非常に下らない。しかしおそらく、そのあまりの下らなさこそに意味がある。この作品の何が挑発的なのか。「下らないだろ?」と観客と一時的に「わかったふり」をしておいて、最後にひっくり返すそのやり方が非常に挑発的に思えます。下品さに嫌悪感を覚える人もいるでしょうし、作家が自分自身の方法論に対してあまりに自覚的であることに対して白々しさを感じる人もいるでしょう。しかし僕は、彼のそんな方法論をも含めて、この作品を支持します。アニメーションが観客とのコミュニケーションによって成立するメディアであることは、数々の巨匠がいろいろな言葉で語っています。(ノルシュテインがたとえば「結局はアトラクションのモンタージュなのだ」と言っていたり。ディズニーやマクラレンが、観客がどう受け止めるかを予期することが重要なのだと言っていたり。)作り手と観客のあいだで、約束事が共有される必要があるということです。この作品が描くのは、そんなアニメーション的コミュニケーションが浸透しきった後の世界のリアリティについてです。すべてが表面上に浮かび上がり、すべてが了解可能だと信じられている世界。狭い因果律で成り立つ世界。この作品は、そんな世界の本質的な下品さ・下らなさを笑い飛ばします。作品終盤のある瞬間、今まで観客と一緒に冷笑的に笑っていたオライリーは、突如として牙を剥きます。おめえこんなんで笑ってんじゃねえよ、と。しかしだからといって、彼は愚かな観客を笑い飛ばすだけでもないのです。彼は挑発的でありつつ、非常に真面目で誠実です。僕たちが現実だと思い込んでいる世界は、決して世界のすべてではないのだとも言いはじめるのです。(明示的には言いませんけど。)言語化できぬもの、単純化しえぬものを示すのだ、と言ったらクリシェに思えてしまうでしょうか。でも、この作品は、そういったものの提示の仕方が、実に素晴らしいと僕は思います。9月のヴェネチアがプレミア上映だったのに、日本ではもうすでに2回も鑑賞のチャンスがありました。逃した方もきっとまた近いうちに日本で観られるチャンスは訪れると思いますから、是非観てください。

『愛と剽窃』(アンドレアス・ヒュカーデ)
Love And Theft (Andreas Hykade)


lovetheft

広島ではまさかのコンペ落ちでしたが、アニメーションズ・フェスで上映できたので、ご覧になった方も多いかと思います。棒線画のシンプルなスタイルで成長することの痛ましさを語りつづけてきたヒュカーデから届いた、まさかのノンナラティブ作品。インディペンデント・アニメーション界の一部になぜか未だにはびこっている「オリジナル幻想」を笑い飛ばすようなものとなっていました。創造というのは先人が残したものへの「愛と剽窃」で成り立っているのだと堂々と語りつつ、しかし「新しいものなど生み出せない」などという変な悲観と息苦しさなど1mmも感じさせないという素晴らしさ。アニメーション・キャラクターたちへの愛、そして葛藤、それを経たうえでの新たな創造的宇宙(ヒュカーデの過去作品のキャラクターが総出演しています)の誕生……ここで展開されているのは、至極真っ当な創造論なのです。ちなみに、中割りを担当したのは、去年の学生ベストに挙げた『生命線』Lebensader(こちらはCALF配給の「和田淳と世界のアニメーション」で上映されました)の作者、アンジェラ・シュテファンです。

Lipsett's Diaries (Theodore Ushev)

Lipsett

セオドア・ウシェフ監督、クリス・ロビンソン脚本というAnimations的には涎が出てしまうような組み合わせ、やはり期待を裏切りませんでした。クリス・ロビンソン『ライアン・ラーキン やせっぽちのバラード』で触れられていた、カナダの実験映画作家アーサー・リプセットが残した日記をもとに作られたというこの作品(最後には、そのような日記など存在しないことが明らかにされるわけですが)、ビジュアル面では格好の良いものですが、しかし現実的にはあまりに救いのないものとなっています。「はじめに白ありき」というナレーションで始まるわけですが、その白とはプロジェクターから発せられる光であり、つまり、暗闇のなかにほのかに光るものでしかありません。この作品は、そのはかない白によって無限の黒の存在を際立たせるような、そんなものになっていると思います。期せずして、自分が世界から切り離されているという感覚を持ってしまった人間が辿らざるを得ない人生の悲劇。映画制作という熱狂も、家族も、ほのかには自分を照らしてくれるかもしれないが、それは永遠ではない。人生の長さと比較すれば、あまりに短い刹那のことでしかない。最後には首を吊る自分の身体を冷徹に「ほら、僕の死体だ」と語ることで物語は締められるわけで、この作品が描くのは、とにかく「切り離されている」ということだけなのです。でもこのテーマ自体は、アニメーションが描きうるリアリティとして、それこそノルシュテインやキャロライン・リーフあたりの時代から繰り返され、去年のベストとして挙げたハーツフェルトだったり、『ウェイキング・ライフ』に代表される近年のロトスコープもの(やアニメーション・ドキュメンタリー)だったり、繰り返されているものでもあります。だけれども、これほどの強度で、これほど純粋に、やってのけた作品は例がないのではないでしょうか。いろいろな映画祭で何度も何度も観ましたが、何度観たって、最後は苦しく辛い気分になります。根底にも背後にもどこにも、ポジティブなものが見当たらない作品なのです。恐ろしいことに。諦めているようにさえ思えてしまう。しかし、強度は半端ないのです。

『わからないブタ』(和田淳)

buta

学生作品ですが、ベストに入れてしまいます。
正直なところ、最初に観たとき、ピンと来ませんでした。しかしその理由が今ではわかります。これまでの和田作品を観る見方で、観てしまっていたのです。どういうことか? これまでの和田作品も匿名の人物たちを描いてきましたが、しかしそのなかで偶然的にフォーカスがあたってしまう中心的なキャラクターがいました。そういった目でこの作品を観たとき、非常に中途半端に思えてしまったのです。描けていないじゃないか、と。しかしそれは僕が完全に間違っていました。今までの和田作品が、ひとりに焦点をあて、そこを中心として物語を展開していたとすれば、この作品においては、その中心は複数あり、散在しているのです。つまり、これまでの和田世界が、俯瞰で捉えられているのです。これまでであれば、中心キャラクターの内面性への接近がありました。彼や彼女のきもちいいことはこういうことなんだな、と了解できました。しかし今回はどのキャラクターも不透明です。彼ら彼女らは一体何を考えているのか? それがさっぱりわからない。しかし、それでいいのです。わからないことが生み出すちぐはぐさ。コヴァリョフが繰り返し描いていることでもあり、パルンが『雨のダイバー』で全面的にフィーチャーしたものでもあります。しかしここで和田は、彼らと同じテーマを扱いながらも、家族という親しい間柄においてさえも起こってしまうそのズレに対して決して悲劇的に感じることなく、それでいいのだ、と優しい目を向けるのです。この作品は、今を生きるための優れた処方箋にさえなっているように思えてしまうのです。

本当ならここにもう一本、プリート・テンダーのKitchen Dimensionsも加えたいところなのですが、

dimensions


去年書いてしまっているのですよね。広島で改めて大画面で堪能して、素晴らしい怪作だという認識を新たにしました。この作品について詳しくは、去年のブログ興奮気味の2009年オタワのブログをどうぞ。滅多にない作品だと思いますよ。

とりあえず今日はここまでです。
以上の5作品が僕が今年観たなかではずば抜けていたと思いますが、
次のエントリではそれと同じくらいに素晴らしく感じた作品を紹介します。
長編(豊作でした)や学生作品や選外佳作的なものについては、さらにその次のエントリにて。

土居

        2010-12-07        ルツェルン・インターナショナル・アニメーション・アカデミー動画

どうも土居です。現在スロヴェニアのアニマテカ国際アニメーション映画祭に参加中です。
意欲的なフェスティバル・ディレクター、イゴール・プラッツェル。彼、攻めてます。

アニマテカのことはまた後日お話しするとして、
今日はちょうど去年の今頃に開催されたLIAA(ルツェルン・インターナショナル・アニメーション・アカデミー)についてのことを少し。

このブログでレポートはしましたけど、現地での講演映像が公式ホームページにアップされています。
英語ですが、ノルシュテイン、クエイ、ポール・ブッシュ、パルン、オライリー、シュヴィッツゲーベル、ロジェ、アルカベッツなど、非常に興味深いものが揃っておりますよ。
http://www.liaa.hslu.ch/tv

土居

        2010-11-21        「和田淳と世界のアニメーション」、始まってます。

和田淳回顧上映&世界の最新アニメーション上映と一回で二度お得な「和田淳と世界のアニメーション」、
本日初日を迎えました。

ベネチア入選日本初公開、和田淳流ジェットコースター・ムービー『春のしくみ』ほか、「これ大丈夫!?」という戸惑いと同時に和田淳という作家の確かなる作家性をビンビンに感じさせてくれる初期作品から世界を大スケールで許容する『わからないブタ』まで、和田淳の(ほぼ)全作品が2プログラムで網羅できます。

海外アニメーションも奮ってます。
AプロBプロのトリを飾るミカエラ・ミュラー『ミラマーレ』やヴェラ・セデルケニイ『オルソリャ』は特に必見です。
前者は油絵流動アニメーションですが、この手法に明らかな新風を吹き込んでいます。あまりに美しすぎて息をのむラストの光景をしかと目に焼き付けていただければ。
後者はちょっと奇妙なトーリル・コーヴェというか。誰もがそれぞれ病んでいるこの世界を、ただそのまま、肯定するようなヴィジョンをみせてくれます。

マルコム・サザランドへのリスペクト&ライバル宣言水江未来『PLAYGROUND』、衝撃的問題作人形アニメーション『悩ましい愛撫』(アヌシーで観たときあまりに意味がわからなくて笑いました。今でも感想は変わりません)、広島で観客を狼の吠え声で一体化させた『オオカミたち』、ヒュカーデ『僕らは草原に住んでいた』の生々しさの現代的アダプテーション『view』……

パルン~コヴァリョフの系譜から奇妙さだけを抜き出してアメリカン・アンダーグラウンド風に味付けしたかのような『ホーンテッド・ハート』、パルン&ピッコフの愛弟子による人を喰ったユーモア劇『小さな家』、人面疽とのあたたかい交流『ベニーニ』、人間の根源的どろどろ欲望を吹き出させる銀木沙織『指を盗んだ女』、社会からフッと抜ける解放感に溢れる『野生』、圧倒的なメタモルフォーゼがブルーレイの高画質高音質で大迫力の『生命線』……

アニメーションズ・フェスティバルに集まった作品が「本格派」だとすれば、
ここに集うのは「個性派」。どの作品もいろいろなかたちで和田作品と響きあっております。
アニメーションの見方をさらに広げてくれる作品群が集まっておりますよ。
26日までの限定公開です。是非!!

土居

        2010-11-12        ウィリアム・ケントリッジ京都賞受賞記念講演「Meeting the World Halfway : A Johannesburg Biography」(日本語版)

ウィリアム・ケントリッジの京都賞受賞記念講演のUstream配信です。
彼の木炭アニメーション作品の必然性を、これ以上ないくらいに示してくれるものになっています。
ヨハネスブルグという街の風景が、いかに「木炭アニメーション」かということ……
僕はかつて書いたノルシュテインの『話の話』についての論文のタイトルを「この世界をアニメートする」と名付けました。
ケントリッジもまた、この世界をアニメートする作家です。
というか、僕たちひとりひとりが、この世界をアニメートしていく存在なのです。
不完全に。不完全だからこそ、創造的解釈が生まれ、時代を超えた共鳴もまた生まれていく……
ラストに語られる、ヨハネスブルグの「崇高」の風景も実にアニメーション的であります。
感動的なスピーチだと思います。

僕も出演する明日のワークショップの配信はないようで、安心しました……

土居






        2010-11-07        11月はいろいろとあります

前まで上映情報お知らせしていたのに最近できてませんね。

明日よりラピュタ阿佐ヶ谷にて川本喜八郎さんの追悼特集「執心と悟り」が開催されます。
先月オタワ前にアニドウ主催の追悼イベントに参加して、
改めて川本さんの作品の恐ろしさに震えました。
オタワで僕が組んだプログラムでは『鬼』を上映させてもらいました。
あれってもう論理とか超越してますよね。
オタワの上映会場ではラストで笑いがこぼれてしまっていたんですけど、
あの究極の不条理を正面から受け止めるのはなかなか難しいかもしれません。
追悼イベントでは『火宅』が恐ろしくてしょうがなかった。
二人の男が勝手に自分を好きになって、勝手に争って、勝手に鳥を殺して、
で、その恨みを勝手に好かれた女の方が受けてしまう……
もう生きているだけでダメっていう。だから世界中炎上っていう。
でもこの説得力ってなんなのでしょうね。
岸田今日子が脚本を書いた『いばら姫または眠り姫』は、
女の人っておそろしいなあ、という意味で怖いです。
あっさり結婚しちゃうとことか。
超論理が説得力を持つときほどおそろしいことはないです。
逃れられないから。
ラピュタは川本さんの作品がまとめてみれるチャンスです。

オフィスH恒例の秋のアニメーション企画がまたあります。
WAT2010
注目はもちろんアニータ・キリ『アングリーマン』でしょう。
広島グランプリをはじめ、今年のフェスティバル・シーンを最も騒がしている作品のひとつです。
僕自身の感想をいえば、前半は傑作でしょう。
極度に高いレベルの切り絵(ノルシュテイン直系)&コラージュで展開される、ホラーぎりぎりの張りつめた空気。
アヌシーで最初に観たときは驚きました。
しかし、後半は「?」となり、それは何度か観た今でも変わりません。
相当な違和感がありますよ。
作家本人は明確にメッセージ性をこめていて、そのことがマイナスに働いている気もしますし、
そもそもそのメッセージが内容自体とあっているのかどうか。
フェスティバルレポートを書く際にもう少ししっかり考えようと思っています。
ともかく、WAT2010は未見の作品が多いので楽しみです。

明日からはノルシュテインのビデオワークショップに参加してきます。
以前生で受けた講座ですけどね。
9日目に『話の話』についてものすごいことが言われており、
こみあげるものがあったのですが、それを再確認したいのです。

13日の「水江未来のアニとーく」、20日からの「和田淳と世界のアニメーション」もよろしくお願いしますね。

土居

        2010-11-04        アヌシー、広島、オタワ

来週の金曜日(11/12)、京都賞のワークショップに出演します。
「思想・芸術」部門で受賞したウィリアム・ケントリッジ氏と対話をします。
http://www.inamori-f.or.jp/kpweek_workshop_c.html
来場の申込が6日までなのでお気をつけ下さい。
素晴らしいお名前が並ぶなかで自分だけ浮いてるのは重々承知しております。
正直かなり不安ですが、
せっかくなので、僕自身の文脈を思いっきりぶつけてみようと思っております。

最近すっかりフェスティバルレポートが中途半端で終わる日々です。
アヌシー、広島、オタワ……
きちんとしたレポートを本ホームページ上(こっちも放置気味です)に載せますので、ご勘弁を。

一般に(?)四大アニメーション映画祭とよばれるもののうち3つに参加したのですが、
どれも本当に色が違います。

今年はASIFA50年の年でした。
アヌシー、広島、オタワ……それぞれ対応が違っていて面白かった。
アヌシーは「50」とバーンと掲げていたわりに冷淡でした。
城での展示は面白かったですが、その図録を作らないで、
「50周年おめでとう!」と能天気な絵がたくさん並ぶどうしようもないカタログを作るという楽しさでした。
盛り上がり自体は、ヘンリー・セリックとアダム・エリオットが同時に長編クリスタルを受賞した去年の方がありました。
このフェスは商業化で批判されてますが、そういうものだと初めから考えておけばあまり気になりません。
ある意味で、「時流に乗っている」わけですから……
アニメーションをビックビジネスにつなげること自体に懐疑的な人間ですから、
(だからCALFをやるんです)
個人的にはそんな方向性には賛同できませんけど、
最新のアニメーションのごった煮を体験する機会としては、一番バラエティに富んでいることは否定できないでしょう。
アヌシーは、カナダで某氏が言っていましたが、「行きたい」映画祭なのではなく、
「行かなければならない(have to)」映画祭なのです。
セレクションのセンスと受賞作品のセンスがもうちょっと良ければいいんですけどね。

広島はあまりに「50」色が強すぎて、正直なところ、あまりエキサイティングではありませんでした。
日本唯一の国際アニメーション映画祭として、もう少し幅を広げてもらいたい気持ちが非常にあります。
現状を考えて、長編が紹介されないのは致命的です。
あまりに「古風」になりすぎているというか……
(2008-2009ベストのエントリで書いた作品、ほとんど上映されてないしな……)
アヌシーは雑多すぎますが、広島はもう少し雑多になっていいと思います。
過去の延長線上にあるもの「だけ」を見ている感じが少し残念です。

オタワには「50」色がまったくなかったです。いつも通りのオタワでした。
改めて思ったのが、日本には日本独自の進化を遂げたテレビアニメーションがありますが、
北米にも、北米独自の進化を遂げたそれがあるということ。
オタワは北米唯一の大きなアニメーション映画祭として、その土着性を発揮しつつ、
きちんと「色」を出すことに成功していると思います。
(その「色」が気に入らない人はかわいそうですけど……特に北米の人はオタワくらいしかないですし。)
短編コンペは、一見主要な作品は他の大きな映画祭と被っているように思えますけど、
実際に全部見てみると、とても新鮮でした。
さらに長編。ショメがいて、『ワンピース』があって、ムロイの新作があって、全編ピクシレーションのローファイ長編(素晴らしかった)Gravity Was Everywhere Back Thenがあって、さらに『緑子』まであるコンペが他にどこにありますか?
審査員のジャッジは正直僕の好みではなかったですが、それなりに一貫していたとは思います。
重さを回避して、軽捷なものが好まれていましたね。
Lei Leiの新作が最優秀物語短編をとり、『フミコの告白』が大学生部門の特別賞をもらっていたところに象徴されていました。(ちなみにLei Leiは、作品自体は僕はそのポジティブさが好きではないですけど、彼自身の存在は中国のインディペンデント界にとって非常に重要なのだと思います。本人も記者会見で言っていましたが、アニメーションを「仕事」以外とする発想は中国では今消えているらしいですから。)
『雨のダイバー』や『アングリーマン』が何も取らないというのは少々驚きましたけど。
グランプリについては長編・短編ともに異議なしです。
特に短編グランプリのオライリー新作The External World。
この作品は「軽さ」を持ちつつ、しかしその軽さ自体が現状批判として機能しているのが素晴らしい。
超越している何ものか(Lei Leiからは一切欠けているもの)に対する視線もあるのがさらに素晴らしい。
(キャラクター化されきっていないあのネコと、子供のあのたどたどしいピアノの名状しがたさはなんでしょう?)
終盤に現れるあの字幕も素晴らしい。

……来週の準備で忙しいので軽くだけ書くつもりが、結構長文になってしまいました。

来月はスロベニアのアニマテカという映画祭に行ってきます。
この映画祭は、僕が唯一行けなかった四大アニメーション映画祭ザグレブのプログラム・アドバイザーをしているイゴール・プラッセルがディレクターをしているものです。
ザグレブは、話を聞く限りでは(そしてプログラムを見る限りでは)、
ASIFA的伝統を継承しつつ、「新しい」アニメーションに対してもオープンであるように思えます。
再来年の短編イヤーにはぜひとも訪れてみたいものです。

東京のみなさんは、
11/20からイメージフォーラムで一週間限定ロードショー、
和田淳と世界のアニメーション」に是非ともご来場ください。
和田淳作品(ほぼ)全作上映に加え、
さすが和田セレクション、というコアで独特な世界の若手作品群がみれますよ。
アニメーションズ・フェスとはまた違った色を持っています。
『悩ましい愛撫』や『ホーンテッド・ハート』の途方もなさに呆れ、
『ミラマーレ』に震え、『オルソリャ』に泣いてください。
ぴあで前売も買えます。Pコードは462-299。

それでは~

土居

        2010-10-22        オタワ国際アニメーション映画祭2010(2)

オタワ二日目。

朝、黒坂圭太さんの現地取材の通訳お手伝い。
その後Meet the Filmmakers(前日のコンペ作家の質問コーナー)を疲れた頭でボーッとみてたら、
Kei Oyamaとかいう日本人が「英語が話せないので素晴らしい通訳を用意しました。Nobuaki Doiです!」といきなり言い出しやがったのでどうしようもなくて通訳。お客さんが100人くらいいて、怖かった。

その後カナディアン・ショーケースへ。遠距離恋愛の彼氏とのあいだの秘密のお手紙で人間誰しもが体験する身体のコンプレックスを告白するFlawed (Andrea Dorfman)、バーを舞台にマスターと客の女性それぞれの精神的孤独の世界が暴露される非常に奇妙な人形アニメーションThe Empress (Lyle Pisio)、根本的な原理はよくわらかぬがなんらかの法則に従って伸び縮みする線や丸の動きが気持ちいいSonar (Trnaud Hallee)が印象に残る。

次はコンペ5に。ロゴラマの間違い?と思っていたMuzoramaは素晴らしく非常シュルレアリスティックな3DCG作品だった。Tord and Tord、Sea Fever、Yellow Cake、Get Real!!が初見のものでは面白いと思った。(しかしGet Realは面白いと思っていたにも関わらず寝てしまった……)

飯を喰って和田さんのサイン会。客入りについては想像にお任せします。クリスさんの息子のジャービスくんと初めて会う。とてもシャイな子だった。でもクリスさんに頼まれて買っていった阪神タイガースのレプリカユニフォームを着て嬉しそうだった。

17:00からは長編コンペ2、フィル・ムロイのGood Bye, Mister Christie。一応はコメディの体裁をなしていた前作とは異なり、笑いは随所で起こるものの、もう暗いったらありゃしない。催眠セックスを得意とするフランス人船乗りとの不倫騒動を皮切りに、さまざまなどうしようもないハプニングが起こり、クリスティーズ氏が世界中で名を知られるようになるまで……ビジュアル的には前作よりもゴージャスになっているものの、最初から非常に瞑想的な音楽が流れ、寝てしまう人も多数(かくいう俺自身も……)。こんなに極端な長編アニメーションって、今まで存在したことなかったんじゃないだろうか。昨日観た『イリュージョニスト』とは正反対。笑える箇所はあるが、観客に対する目配せはほとんどないと言っていい。同じ個人作家の個人制作長編でも、ピル・プリンプトンやニナ・パーレイとはまったく違う。作品の存在自体が価値をもつ、ユニークな長編。

オタワに来たらやっぱり特別プログラムをみなきゃいけないでしょう。
精神病的なテーマの作品を集めたLet's Go Crazyが今回の目玉のひとつ。
上映のメンツをみて面白そうと思って参加したけれども、腹の調子が異様に悪くてしんどく、
寝てしまって、さらにトイレへ途中退室、ヤバそうだったのでホテルに帰還。

しかしちょっと休んで回復したので短編コンペ2も。
前半は観たことある作品が続いたが、『雨のダイバー』(今年何回目だ?)、A Family Portrait、Light Formsはやはり面白い。

それにしても驚いた&面白かったのは、本来『アングリーマン』がトリなのに、順番が入れ替わって、The Burning Haus(Nils Knoblich)が最後になっていたこと。
精錬潔癖にみえるスーパーマンの真の欲望を爆笑を引き起こすかたちで引きずり出すこの作品は、
『アングリーマン』のきな臭さとは異なり、明確でよかったです。

明日はピクニック。雨降りませんように。

土居伸彰

        2010-10-21        オタワ国際アニメーション映画祭2010(1)

いまさらですが、アニメーションズ・フェスティバル2010、
たくさんの方にお越しいただき、本当にありがとうございました。
アンコール上映実現に向けて、頑張っていきます。

フェスの準備やCALFや環境の変化でブログの方がおざなりになってしまっています。
アヌシーについて書くつもりがいつのまにか広島になり、
広島について書かなきゃ、と思っているうちにオタワになり……

それぞれのフェスについて、書きたいことはやまほどあるんです。

現在オタワにいます。
一日目が終わりました。
短くてもいいので、なんとか速報をと思っています。

オタワフェスは、一日目が夕方~夜がスタートです。
今日の昼間はオタワの街をぶらぶらとして、
7時以降の長編・短編のコンペで映画祭の幕が切って落とされました。

オープニング作品は長編コンペ1のシルヴァン・ショメの新作長編『イリュージョニスト』です。
今年のアヌシーの開会式で流れた作品でもありました。
ジャック・タチが遺した脚本をショメがアニメーション化したこの映画。
本当に素晴らしいと思いました。
これまでのショメ作品にあった(あえてこう形容してしまいますが)「押し付けがましさ」が後退し、
しかし、ショメの「これがやりたい」という熱気がほぼすべての面において空回りせず、ひとつの大きな物語を駆動させていました。
この寡黙にして雄弁な長編アニメーション、ショメの方向性があまりにユニークすぎて、
たとえばアダム・エリオットの『メアリーとマックス』(去年のオープニング作品でした)がそうであるように、
人によっては受け入れがたいものとなっているでしょうが、
これはひとつの極北だと思います。
各地の劇場を転々とする時代遅れのマジシャンと、彼の「イリュージョン」を本気で魔法だと信じる田舎娘のお話。
前者は年老いた男のリアルタイムの時間を背負い、後者は成長していく女の幾分象徴的な時間を背負い、
しかし両者の持つ異なる時間感覚が何の不自然もなく絡み合う……
ラスト近辺のあの誰もいない夜の部屋のシーン。あそこで起きる、誰も観客のいない「イリュージョン」。
あの圧倒性を何と形容すればいいのでしょう?
恥ずかしいくらいに、涙がこぼれてきてしまいました。
日本では来年の公開が決まっているはずです。
この作品はぜひとも映画館で観てください。

短編コンペ1、
クリス・ロビンソンのオープニング・スピーチ、
本を黙読しつづけて、最後にラジオから流れるベティ・ブープの歌うLet's Go Crazy(今年のオタワの特別プログラムのひとつのタイトルでもあります)に耳を澄ませるという非常に勇気あるものでした。
それに続くコンペ作品自体は、散漫な印象を受けました。
(去年はコンペプログラム全体として「物語」のあるセレクトになっていたから余計にそう思うのかもしれませんが。)

アヌシーの学生コンペでも既に観ているPrayers for Peace (Dustin Grella)が素晴らしかったです。
イラク戦争で帰らぬ人となった弟に思いを馳せるアニメーション。
『戦場でワルツを』同様に、
弟の死という圧倒的な現実によって塗り替えられていく主観的知覚をアニメーション表現に託しつつ、
そこに回収しきれない、現実に起こったのに理解しきることのできない圧倒的な「現実」を、
死の直前の弟の実際の通信音声をベタに聴かせることによって観客にも追体験させていくそのやり方。
近年の一連のアニメーションの「流行」は、『戦場でワルツを』やこの作品で、
逆にアニメーションの限界をありありと照らし出しています。

大山慶『HAND SOAP』、大きな賞を取るんじゃないかと思っていたのですが、
上映が真っ暗で、何が起こっているのかほとんどわからず、
もったいないことをしてるなあ、という感想しか抱けませんでした。

明日はついに本格的にフェスが始動します。
たくさんの良い作品に出会えるといいのですが。

土居

        2010-08-17        「CALF in 高円寺」には絶対に来てください!

大山慶、和田淳、水江未来、そして僕で設立した映像インディペンデントレーベルCALF、
広島での設立イベントは大盛況でした。お越しくださったみなさん、ありがとうございました。

第二弾を東京でもやります。
DVDの先行割引発売があります。
広島で優秀賞を受賞した大山慶『HAND SOAP』の凱旋上映もあります。
すっごく楽しいPiKA PiKAワークショップもあります。
実写の分野で活躍中の平林勇監督、真利子哲也監督をお招きして、短編の上映があります。

なにより、トークがあります。トークは気合入れていきます。
なぜCALFを始めたのか。CALFがあることによって、将来的にどのようなことが起こるか。
ただ単に、自分たちのDVDを売るためのレーベルを始めたという話ではないのです。
(それだったらDVDを出しようがない僕がいる意味も必然性もない。)

短編は儲かりません。だから社会の惰性に任せていては何も動きません。
短編に労力や時間を捧げ、
その捧げたものを無駄にしないためには、
独力で新しい枠組みであったり仕組みであったり、そういうものを意識的に作り上げる必要があるのです。
そこに入り込めばオッケー、安心、みたいな場所は短編にはないのです。
CALFの試みは、この大きな世界のなかでちっぽけな自分に一体何ができるのか、それを探る試みでもあるのです。
もちろん僕たち自身の試みでもありますが、それを通じて、この試みはみなさん自身のものにもなることも願っています。
僕たちにも実際に何かができるんだ、というそのことに気付くための試み。
僕自身にとってCALFはそういうものです。
その第一歩を是非とも見届けてください。
Animationsのウェブをチェックしてくれているみなさんには、一人残らず来ていただきたいです。
みなさん自身も何かを持って帰ることのできるイベントにできるよう、頑張ります。
会場でお待ちしています。

詳細はこちらです。

「CALF in 高円寺」

レーベル設立 & DVDリリースイベント第二弾が東京上陸!
若手映像作家・評論家たちによるインディーズレーベル「CALF」。その設立&DVD発売記念イベントが東京・高円寺にやってくる! CALF所属のアニメーション作家たちの作品上映に加え、NHK「トップランナー」出演など今や日本の映像の最先端を走るトーチカによるPiKA PiKAワークショップ、さらに実写映画の領域で国際的に高い評価を受ける平林勇監督、真利子哲也監督をゲストに迎えた作品上映&トークなど盛りだくさんの2時間半! 会場では定価2800円のDVDを特別価格で販売!(事前予約だと一枚あたり800円OFF!)お見逃しなく!

日時 : 2010/8/31(火) 19:00-21:30(開場18:30)

会場:座・高円寺2
杉並区高円寺北2-1-2 / TEL:03-3223-7500 FAX:03-3223-7501
交通アクセスは、座・高円寺のホームページをご覧下さい。
http://za-koenji.jp/

チケット
・メール予約 入場のみ      1,000円
       入場+DVD1種つき 3,000円(DVD定価より800円OFF!)
       入場+DVD2種つき 5,000円(DVD定価より1600円OFF!)
・当日 1,500円 ※DVDを会場特別価格で購入可能!

事前予約
メールにてご予約を受け付けております。
席に限りがございますので是非ご利用ください。
ticket●calf.jp
(●を@に変えてください。)
お名前、電話番号、メールアドレス、ご予約されるチケットの種類を明記の上、
件名を「CALF in 高円寺」としお送りください。

プログラム
第1部 CALF作品上映
上映作品
水江未来 :『JAM』 2:46 /『METROPOLIS』4:45 / 『PLAYGROUND』3:50
大山慶 :『HAND SOAP』16:00
和田淳 :『子供の廻転の事』 3:00 /『やさしい笛、鳥、石』 3:00 / 『そういう眼鏡』 6:00
トーチカ :『PiKA PiKA 2007』 5:00 /『PIKA PIKA in ANIMA MUNDI』1:14

第2部 PiKAPiKA ワークショップ
空中にペンライトの光で絵を描くことでアニメーションを作る「PiKA PiKA」。このプログラムでは、なんと来場のお客さん全員でPiKA PiKAをやってしまいます! 結果はイベントの最後にお披露目。驚くほど楽しいこの体験、みんなでアニメーション作家になろう!!

第3部 ゲスト作品上映とトークショー
日本のみならず世界の映画祭で評価されている平林勇監督、真利子哲也監督の短編作品上映&お二人を交えてのトークセッション! 今の時代にインディペンデント映画を作りつづけることの意義を語ります。映画の新しい可能性がここから始まる!!!

上映作品
平林勇:『Shikasha』 10:00
1972年静岡県生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。CMディレクター。『ドロン』が釜山アジア短編映画祭、グラナダ国際短編映画祭でグランプリ、『BABIN』がロカルノ国際映画祭で審査員賞、学生審査員賞をダブル受賞。『aramaki』はベルリン国際映画祭短編部門にノミネート、『Shikasha』はカンヌ国際映画祭監督週間にて正式招待上映された。
真利子哲也:『マリコ三十騎』24:00
1981年東京生まれ。法政大学文学部日本文学科卒業。同大学在学中に撮った『極東のマンション』『マリコ三十騎』が、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で2年連続グランプリを受賞。ほかにも、オーバーハウゼン国際短編映画祭の映画賞を含む9つの映画祭で受賞。長編映画『イエローキッド』はバンクーバー国際映画祭ほか数多くの国際映画祭で上映され、2010年にはユーロスペースを皮切りに全国劇場公開された。

企画:CALF

        2010-08-08        広島2010一日目

2008広島から二年間が経ち、そのあいだに海外の映画祭にそこそこ頻繁に参加するようになり、
広島の印象もいろいろと変わりました。

まあ、それはまたの機会に置いておき、至極簡単に一日目を。

ベスト・オブ・ザ・ワールドはMemee(Evelyn Verschoore)がとてもよかったです。今日の発見。

あと、広島受賞作品集をなめちゃいけない。もしかしたら一番有効なプログラムかと。『おんぼろフィルム』『ビック・スニット』とか、クラシック作品のすごさを実感。観るものに困ったら受賞作品集プログラムに行きましょう。

コンペについてはまたあとで。

土居

        2010-08-06        広島2010コンペプレビュー(4)

四日目です! ラストだ!

44ラナウェイ RUNAWAY (Cordell Barker)
→Cat Came BackやStrange Invadersなどカナディアン・カートゥーンを代表する作家コーデル・バーカーの最新作です。アヌシー2009で賞をとってます。アカデミー賞常連さんですが、今作品もノミネートされましたね。さすがの安定感。エンターテインメントしてます。

45ダニー・ボーイ Danny Boy (Marek Skrobecki)
→ポーランドのセ・マ・フォルスタジオ製作。スチルみただけじゃ最近はどういう手法で作ってるかわからんすね。未見です。

46イヌクシュクInukshuk (Camillelvis Théry)
→これは嬉しいコンペイン。去年のオタワでは、Lebensaderとこれとが並んで「フィルムってええなあ……」みたいな感慨を残してくれました。インクのにじみまで見えてしまうような質感とだまし絵的構造。陰陽。エスキモーとクマ、クジラの物語。どうかフィルム上映されますように。

47ウルヴス WOLVES (Rafael Sommerhalder)
→RCAの学生作品です。Flowerpotという作品がザグレブの学生部門でスペシャルメンション受賞。ほのぼのとした、なかなか良い作品ですよ。

48マルバン MALBAN (Elodie Bouédec)
→これ気になってるんですよ。やっぱLes Films du Nord気になるわ。未見です。抜粋をみてみると、かなりリアルな人間がモデリングみたいな動きで会話劇をしてました。すごく興味深いかしこたま退屈か、どちらかですかね。

49ザ・ボトル The Bottle (Yoon-hee LEE, Moon-kyung SHIN, Yoo-kyung CHA, Ji-young HEO)
→でました韓国の『ミルク』。水江未来情報によれば本人たちはコヴァリョフは観たことないと言っていたらしいですが。コヴァリョフ好きなら思うことあるはず。二人の不器用で人見知りの少女の交流。

50キッチン・ディメンションズ Kitchen Dimensions (Priit Tender)
→でました変態作。あまりに壮大なあほらしさ。台所と宇宙がつながります。現代の『ファンタジア』。イメージフォーラムフェスでも上映されましたが、画質があまり良くなくてちょっと残念でした。フィルムで観たらまた全然違うので祈っときましょう。みなであきれましょう。

51ジ・エンプロイメント The Employment (Santiago 'Bou' Grasso)
→でましたアルゼンチン発。アヌシーで大山さんにサインをもらいに来てたのが印象的でした。Animations界隈ではもはやおなじみの作品ですよね。人間の仕事について。つやつやとした和田淳、的な。

52リップセットの日記 Lipsett's Diaries (Theodore Ushev)
→でましたウシェフ&クリス・ロビンソン。このブログを読んでいる人は当然『ライアン・ラーキン やせっぽちのバラード』を読んでいると思いますけど、そこでも登場した伝説の映像作家アーサー・リプセットの日記(虚構)に基づいたアニメーション。物語自体は、リプセットの人生を見出そうとして逆に見出された、クリス・ロビンソンの人生についてです。重厚で広島好みしそうな作品。そういえば、ライアン・ラーキンの遺作(といいたくないけど)『スペア・チェンジ 小銭を』も広島で上映されるらしいですよ。

53指を盗んだ女 Woman who stole fingers (銀木 沙織)
→芸大修了制作からの二本目です。これまでは「知る人ぞ知る」存在でしたけど、この修了制作でようやく表だって評価されるようになってきましたね。観客を戸惑わせることを厭わないその態度は最近の学生作家にはあまりみられないものなので、素晴らしいと思います。この作品は本来そうなるべきだったものより、だいぶ荒く未完成な印象がありますが、それでも筋は通ってます。母親の行き過ぎた愛情と支配欲。

54アルファ9星の怖いヤツThe Terrible Thing of Alpha-9! (Jake Armstrong)
→去年のオタワの在学中作品最優秀賞受賞のこの作品。かわいげのあるキャラクターと優れたストーリーテリングが魅力的です。何度か観ましたが、飽きません。彼のブログに行ったら、アヌシーで最も印象的だった作品のひとつOld Fangsがyoutubeでみれるようになったという知らせが書いてあったので、みなさんも観ましょう。これは本当に素晴らしいんですよ。 大山さんが第三位だったFes Ancaで第一位です。この映画祭、第二位はアヌシーの学生部門で個人的にベストだったArsolyaだし、センス良すぎです。

55鵜飼Night Fishing with Cormorants (Betsy Kopmar)
→デジタル抽象アニメーションで結構キャリアの長い方のようです。今回のコンペではかなり異色だと言っていいでしょう。楽しみ楽しみ。

56服を着るまでGetting dressed (北村愛子)
→芸大修了制作からのコンペイン三作目です。実質的には一作目だと思いましたから大したものです。完成度という点でいえば、芸大のなかでも一、二を争うものだと思いました。いかにもアニメーションらしい語りによって、「私たち」の物語を語るドローイング・アニメーションです。ナレーションは同コンペに入選している銀木沙織さん。

57マザー・オブ・メニー Mother Of Many (Emma Lazenby)
→今年の広島は分数の長い作品が多いせいか、作品数が少なめですね。ラストを飾るのはアーサー・コックス・スタジオ(前回目立ちましたね)から。BAFTA受賞作です。妊婦さんたちの物語だそうです。誕生。(ああ、ヒュカーデの新作も入ってればなあ……)

以上57作品、一気にプレビューしました。
それではみなさん、広島でお会いしましょう!

土居

        2010-08-06        広島2010コンペプレビュー(3)

二日間に分けてアップしようと思いましたが一気にいっちゃいますね。

三日目です!

29ポスタロリオ Postalolio (Marv Newland)
→マーヴ・ニューランドですよ。『バンビ・ミーツ・ゴジラ』の人ですよ。ユーモア感と楽しさ満点のこの作品、いろいろなところから作家本人が投函したハガキの上でアニメーションが作られております。観れば観るほど気分が穏やかになります。

30桃の源 Haven Of Peace (Liu Song, Ping Jiang)
→未見の中国作品です。邦題は「桃源郷」じゃだめだったんでしょうか。ていうか原題の「桃花源」そのままでよくないすか。作品みたら邦題の意味がわかるのかな。

31ザ・スウィーデッシュ・ウーマン The Swedish Woman (Nicolas Liguori)
→この邦題は発音がいいですね。スウィーデッシュ。スウィーっす。結構粒ぞろいの短編をそろえているLes Films du Nordスタジオ制作の作品。過去には『マロット』だったり、今年に入ってからは『トラベラー』 のJohan Pollefoortが新作を作っていたり。この作品も予告編を見る限り、非常にアニメーション的な濃厚なゆったり感が素敵に思えますが。

32引き出しと烏 THE DRAWER AND THE CROW (Frederick Tremblay)
→去年のオタワで最優秀カナダ作品を獲得した人形アニメーションです。人形の作りもセットもなんだか非常にぎこちないのですが、そのぎこちなさが持っている変な力みたいなものがあって、結構印象に残っています。部屋と女と私。

33フォーミング・ゲーム FORMING GAME (Malcolm Sutherland)
→Animationsをチェックしてくれているような方にはもはやおなじみの作品ですよね。広島2006で鮮烈な印象を残した『バードコールズ』のマルコム・サザランドがNFBで制作した『フォーミング・ゲーム』。コンテンポラリー・アニメーションでも紹介されましたが、難解さなどまったく感じさせることのない、ただワクワクする気持ちを喚起してくれる抽象アニメーションです。

34ハンド・ソープ HAND SOAP (大山慶)
→もはや説明不要。2008-2009ベストにも並べさせていただきました。そろそろ大きなアニメーション映画祭で賞が欲しいところですよね。広島やオタワはそのにおいが結構ぷんぷんします。アカデミー賞みたいに最優秀主題歌賞とかあれば、いけそうなのに。コラージュをもちいた「凝視」のアニメーション。ダンスのカタルシス。

35ひとり言 The Soliloquist(Kuang Pei Ma)
→アヌシー2009学生部門特別賞。アジア(とときおりロシア)特有の少し心地よい孤独感で進行していくアニメーションです。

36アングリー・マン ANGRY MAN (Anita Killi)
→今年の話題作というか問題作のひとつでしょう。アヌシーでは三つも賞を取ってしまいました。作家の手が吐きだす吐息が感じられそうな、ハイクオリティな切り絵アニメーション。家庭内暴力の重苦しい雰囲気にハラハラドキドキの前半と、キョトンとしてしまうような後半。いや、見方が悪かったのかもしれない……広島での二回目が楽しみです。

37クリギ Chris (Anja Kofmel)
→今回の選考委員の一人オットー・アルダーが教授をしているルツェルン美術大学での卒業制作作品です。未見。

38エクストロスペクツィア EXTROSPEKCJA (Stephanie Sergeant)
→クラクフ美術大学のイェルジ・クチャの学生のようです。鉛筆画によるアニメーションとのこと。未見。

39ちいさな部屋 The Smaller Room (Nina Wehrle, Cristobal Leon)
→衝撃の新世代立体アニメーション『ルイス/ルチア』(「アニメーションズ・フェスティバル」でやりますよ!)のアニメーション担当クリストバル・レオンによる新作です。どういう展開になるのでしょうか?

40坊やと野獣 The Little Boy and The Beast (Johannes Weiland, Uwe Heidschötter)
→ドイツのスタジオSOI作品です。野獣の母親とその人間の息子の話とのこと。

41ダスト・キッド DUST KID (Yumi Jung)
→韓国気鋭の作家ヂョン・ユミの出世作もコンペイン。本人は新作制作中なので残念ながら広島には来ないようですが……自分自身と折り合いをつけることに関する、静かな物語です。アニメーションズ・フェスティバルでやります!

42セバスチャンのブードゥー教 Sebastian's Voodoo (Joaquin Baldwin)
→かなりたくさんの賞を取っている(ただし実写寄り)3DCG作品です。いろんなところで名前はききますけど、スチルはみますけど、未見です。

43ラテラリウスLaterarius (Marina Rosset)
→前回の広島ではBotteoubateauでコンペインしていますね。良い感じに力の抜けたドローイングで少々残酷な物語を語る人で、となるとファベの系譜に連なるのでしょうか。今回の『ラテラリウス』はアヌシーの作品企画コンペで賞を取ったものです。(『ハッピーエンドの不幸なお話』もその枠出身)作家本人は広島に来ます。パーティー・モンスターなのでご注意を。

土居

        2010-08-06        広島2010コンペプレビュー(2)

二日目行きます!

13リタッチ Retouches (Georges Schwizgebel)
→言わずと知れた巨匠ジョルジュ・シュヴィツゲーベルの最新作。アヌシー2009にて観ました。タイトル通りの「修正」で続いていくメタモルフォーゼ。劇的だった前作『技』と比べれば、非常に瞑想的です。呼吸の音、波の音。音楽のリズムではなく、生命の静かなリズム。

14仕立屋の娘 The Dressmaker's Daughter (Huni Melissa Bolliger)
→残念ながらよく知りません。スチルを観ると、期待できそうな感じですが……? オーストラリアのヴィクトリアン美術大学の学生作品っぽいです。

15コミュニケート Communicate (Erick Oh)
→アヌシーではコミッション部門でノミネートしてました。

16ピクニック日和 Nice Day for a Picnic (Monica Gallab)
→去年のアヌシーの学生部門で観ました。和田淳meets『リボルバー』&女性性といった趣の作品。反復と匿名性。良作です。

17ミクスド・バッグ Mixed Bag (Isabelle Favez)
→『アップルパイ』が前々回の広島で優秀賞を取っているみんな大好きイザベル・ファベ。かわいいキャラクターと彼らが巻き込まれる残酷な物語のギャップが少なからぬ人たちのハートを打ち抜いていて僕もその一人ですが、今回はファベ作品だと考えるとちょっと弱いかな……

18ザ・スパイン The Spine (Chris Landreth)
→『ライアン』で大ブレイクしたクリス・ランドレスの新作です。はじめ去年のアヌシーのパノラマで観たとき、長編映画の長い予告編みたいに感じました。英語ナレーションが理解できなかったせいかなと思ったのですが、CAFで字幕つきでみてもあまり印象はかわりませんでした。相変わらず後を引くキャラクター・デザインです。

19 JAM (水江未来)
→日本の若手のミスター映画祭水江未来も二度目のコンペイン。『JAM』は本当に映画祭ウケがいいですね~! 個人的には名作『MODERN』を大画面で観たかったのですけれども。作家本人は日本での評価の低さを嘆いていたこの『JAM』ですが、小さな画面で観てもあまり伝わらないかもしれませんね。僕も大きな画面で観たことないですけど。宣伝です。水江未来作品集、広島にて先行発売しますよ!! 8/10のCALFイベントも来てね!

20冬至 The Winter Solstice (Xi Chen, Xu An)
→2009のアヌシーで観た気がする……思い出せない……新作がザグレブに入ってたと思いますが、観た人、どんな作品でしたか~?

21人生の叫び I Was Crying Out At Life. Or For It (Vergine Keaton)
→アヌシー2009で鮮烈な印象を残してくれた作品のひとつです。ラン・レイクやこの人の作品を観ていると、デジタル切り絵に新しいアニメーションの可能性を感じてしまうんですよ。この運動感とダイナミズムはまさしく良質なアニメーションのそれでしょう? 掛け値なしに「かっこいい」作品でもあります。

22ダイバーズ・イン・ザ・レインDivers In The Rain (Priit Pärn, Olga Pärn)
→来日中のパルン夫妻最新作。まだ誰も突っ込んできけてないですけど、この作品も『ガブリエラ』同様に前の奥さんの死が重要なモチーフになっているのではないでしょうか。『ガブリエラ』で夫と妻を隔てた横断歩道、物理的な距離以上に感じられるあの精神的な距離、とどきようのなさ。あのもどかしさと唖然とした気持ちがなんだかずっと続くような印象があるんです。なんでそんな作品に、美しさを感じてしまうんでしょう? パルン史上もっともストレートで、同時にもっともわからなくもある、とても不思議な作品。僕はまだこの作品の全貌がつかめません。それどころか、とっかかりさえも見いだせてないかも。

23ミッドナイト・ゲストThe Midnight Guests (Yulia Ruditskaya)
→クロクに参加した際に仲良くなりました(どうでもいい情報)。広島にも来ます。ノルシュテインらが作り、今ではミハイル・アルダシンとイワン・マクシーモフが主に教えているシャールの学生です。作品自体は、観たことある範囲でいえば、デジタル切り絵でしたが今回はどうなんでしょう。

24ザ・ツイン・ガールズ・オブ・サンセット・ストリート The twin girls of Sunset Street (Marc Riba, Anna Solanas)
→コンスタントに人形アニメーション作品を発表している二人組ですよね。作品は何本かどこかの機会で観たことある気がするんですが、あんまり覚えてないです。

25ビデオゲーム・ア・ループ・エクスペリメントVideogame a loop experiment (Donato Sansone)
→どこかで観たことあるんですが(ああ、アヌシーのパノラマだ)、なんだかまじめな人なんだろうな、と思った記憶があります。

26ゼロ Zero (Christopher Kezelos)
→素材感溢れる人形アニメーション。観たことないですけど。コンペ入選や受賞もそこそこしているようです。

27ドラックス・フラックス DRUX FLUX (Theodore Ushev)
→『タワー・バウアー』で映画祭シーンに一躍躍り出たセオドア・ウシェフ、今回の広島では二本がコンペイン。『ドラックス・フラックス』がアニメーションなのかといったら、そうじゃない気もしますけど、オタワで観ることできた3D版がこの作品は面白いんですよ。そういえば記者会見のときにディレクターの木下小夜子さんが3D上映プログラムを準備中と言ってましたが、結局やらないんでしょうかね。

28二羽のヤマウズラTwo Partidges (Jean-Luc Greco, Catherine Buffat)
→ちょっと調べたところフォリマージュ関連の方々みたいですね。スタジオのホームページ探ってたらレジーナ・ペッソアの新作が制作中って書いてあってちょっと興奮しました。

三日目に続きます。

土居

        2010-08-06        広島2010コンペプレビュー(1)

なんともう明後日から広島なんですね~!

前回かなり好評だったコンペ作品のプレビューを今回もしようと思います。
予習をするとしないとじゃ、楽しみ方が大違いです!

今日は初日と二日目のコンペについてチェック!

初日と二日目で、エントリは分けますね。

まず初日です。日本語題/英語題(原題ではなく)でいきます。


○一日目
01ロスト・アンド・ファウンド Lost and Found (Philip Hunt)
→子供向けテレビ作品として近年フェスティバルシーンを騒がせている作品です。アヌシー2009では最優秀テレビ作品、BAFTAアワード最優秀子供向け作品など大きな受賞が続けています。オリバー・ジェファーズ『まいごのペンギン』(邦訳あり)が原作だそうです。未見ですが、予告編を観るかぎり非常によくできた温かみのある3DCGなので期待しましょう。(ナレーションもあるし長いし期待でもしておかねば……)

02スリープ SLEEP (Claudius Gentinetta, Frank Braun)
→文化庁メディア芸術祭優秀賞受賞『ケーブルカー』のコンビの新作です。

03わからないブタ In a pig's eye(和田淳)
→国内のシーンではもはやおなじみの芸大一期生修了制作を代表する作品が広島でもきちんとコンペインしました。先日パルン夫妻とお話ししたとき、『わからないブタ』は和田淳のネクストレベルだ、とおっしゃっていました。人々のズレ・不理解を許容するやさしい物語です。「アニメーションズ・フェスティバル2010」でも上映します。

04思考の列車 TRAIN OF THOUGHT (Leo Bridle, Ben Thomas)
→アヌシーの学生部門にノミネート。実写を用いた切り絵とペーパークラフトで作られたミニチュア・アニメーションです。

05タッチ TOUCH (Ferenc Cakó)
→砂絵アートの巨匠フェレンク・カーコの新作です。砂絵のライブパフォーマンスの方はすごいですよね。

06翼とオール Wings And Oars (Vladimir Leschiov)
→前回、前々回と連続で優秀賞を受賞している、広島に愛されているレスチョフ新作です。といっても去年のアヌシーでもすでに流れているのですが……今回は『つみきのいえ』をちょっと思わせなくもない色調で、愛と別れの話がノスタルジックに描かれます。日本で非常に受けそう。

07ムトー Muto (BLU)
→最近発表した新作も話題のグラフィティ・アニメーターBLUの出世作。日本でもすでに何度か観る機会がありましたし、もはやおなじみの存在といってもいいでしょう。とはいえほとんどの方はパソコン画面でしか観たことがないでしょうから、広島の大スクリーンでの体験はまた違った感覚を与えるんじゃないでしょうか。

08レーベンザーダー Lebensader (Angela Steffen)
→出た! これほんとに大画面で観たらびっくりしますよ。主要映画祭の学生部門の賞ハンターであり、残念ながら広島ではコンペインしていない今年の名作『愛と剽窃』(アンドレアス・ヒュカーデ)で中割を担当したアンジェラさんの恐るべき学生作品。ちなみにヒュカーデは学生時代に弟子にしてほしいと言ってきた彼女の申し出を断ったそうです。「本物のアーティストになってほしいからね」とのこと。生死はあざなえる縄のごとし。広島で観れない『愛と剽窃』は、「アニメーションズ・フェスティバル2010」にて!

09クラウズ,ハンズ Clouds, hands (Simone Massi)
→前々回の広島で木下蓮三賞受賞のシモーネ・マッシの新作です。今年のアヌシーのパノラマで観ました。(パノラマでまともな作品はこれと後述の『ファミリー・ポートレート』くらいだったかも……)決して派手ではないけれども良質な作品を継続的に作っているこういった作家さん(レスチョフも)を評価しつづけているのは、広島の良いところだと思われます。詩と記憶的変容。良作です。

10アトミック・ワールド ATOMIC WORLD (今津 良樹)
→ムサビの修了制作作品。去年のask映像祭で入選してもいました。現代的でポップなシュヴィッツゲーベルといった印象。初見の際、最初の30秒くらいで驚かされたものです。

11プディア Pudya (Sonya Kravtsova)
→2003年のA Musical Shopはオタワで賞を取るなど、隠れファンの多い作品だったようです。今回の作品がどうなのかわかりませんが、前回の広島で鮮烈な印象を残した『母と音楽』の製作スタジオのアニモースでよく作品を作っている人ですので、ある程度期待できるのでは。ノルシュテイン・インスパイア系だそう。

12ファミリー・ポートレイト A Family Portrait (Joseph Pierce)
→手描きぐにゃぐにゃロトスコープが人間の内面や人間同士の関係性を可視化します。オープニング&エンドクレジットのしょぼさには「?」ですが(スージー・テンプルトン現象?)、内容は折り紙つきに面白いです。記念写真を撮る家族の本性が暴かれていくさまは圧巻。

二日目はまたエントリを分けて!

土居

        2010-08-05        広島から辿る黄金コースそしてCALF

ご無沙汰です、土居です。たくさんつぶやいてますけど、ブログでまとまった記事を書く時間がないというのが現状です……
しかしそのあいだにアヌシーの記憶が薄れていき、そしてなんと、広島が今週末から……!!!!

ブログを書かざるをえないんですね。

まだここでは告知してませんでしたが、ご存知の方も多いと思いますけど、
僕、そして大山慶、和田淳、水江未来というアニメーション作家陣とでレーベルを立ち上げます。
その名も「CALF」。

これです!!

http://calf.jp/

僕のなかでは、「アニメーションズ・フェスティバル2010」と両輪になってます。
今までの短編アニメーションの世界は、どうも自閉的になっていました。
他の分野の人たちにはなかなか届きませんでしたよね。交流が起こりませんでしたよね。
その壁はそろそろぶちこわす時間ですし、
同時に、短編アニメーションの素晴らしい世界を他の分野の方々にも知ってもらう時間なんですよ。
そのためにはなんらかの「かたち」が必要なわけで、
それがCALFであり、アニメーションズ・フェスティバルなんです。
風通しを良くしたいんです。
正直なところ、正しい事ができているのかなんてわかりません。
でも、何が必要か、何をやるべきか、それって何かを実際にやってみて初めてわかるものだと思うんですよね。
なにかかたちにしてみると、思わぬ連鎖反応が起こったりするものなんです。

おっと、話が逸れた。
広島に行く方! こんなコースを辿ってはどうですか?

もちろん8/7~11は広島国際アニメーションフェスティバル
できるなら、6日から行きましょう。平和式典から。間に合わなければ灯籠流しだけでも。平和記念公園のあたりをぶらぶらと歩くだけで、なにかしら思うことはあるはずです。
会期中は、一般の方も参加できるパーティーが、僕の記憶が正しければ2日間あります。
そこで海外の作家さんたちと交流してもいいですし(OTISにいけばみんな溜まってますけどね)、
そう、10日のコンペ終了後にはCALFの立ち上げイベントがあります。

これです!
http://calf.jp/special/special001.html

CALF in 広島は8月10日(火)22:00-24:00までやります。
広島では流れない大山&和田&水江&トーチカ作品の上映、
PiKA PiKAのワークショップ(これ絶対楽しいから)
そしてCALFメンバーによるトークショー。盛りだくさんの2時間です。
終わったら朝まで飲みましょう。

さて次です。
広島が終わったからといってアニメーション行脚はまだ続くのです。
12日の夜にはマツダスタジアムで広島x阪神をみたりして、
13日の昼には甲子園に行ってみたりして、時間を潰して、

13日の夜は……?

これです。
http://www.priit-parn.com/
プリート・パルン特集上映があるんですね~しかもドキュメンタリーまで! 
13日夜にはパルン夫妻も来場ですよ!
very nice.

14日、15日と神戸での上映はつづきます。

そして夏休みの終わり、8/31には……おっと、ここから先はまだ言っちゃダメなんだった。
別にいいか。
8/31(火)はCALF設立イベントを座・高円寺2でやるんです。
上映もありますし(広島とは違う作品です)、PiKA PiKAワークショップもありますし(何度やっても楽しい)、実写短編作品の上映もやるんです。平林勇監督、真利子哲也監督の作品上映と、お二人をお招きしてのトーク。インディペンデント映画を作ることについて、熱い思いをぶつけあいます。

詳細は後日。

そうそう、二年前にやって好評だった広島コンペ作品プレビュー、コツコツと準備していたので、広島開催前に公開しますよ。鑑賞のご参考に。

それでは!

土居

        2010-06-17        アヌシーインターナルアニメーションフェスティバル2010(0)

アヌシーから帰ってきました。
いつもどおり、インターナルな視点で眺めたインターナショナルフェスティバルのレポートをしていきます。
フェスティバルは作品を観るだけがフェスティバルではないという持論にもとづくアプローチです。

ーーーー

○0日目(6/6~会場到着まで)
成田発パリ行きのエールフランス夜行便で出発。21:55発4:15着。予定されている飛行時間は13時間ほどで、普通のフライトより1時間ほど長い。しかし成田からの離陸前に相当な時間を機内で待たされる。表向き、成田は22時以降に離陸してはならず、シャルルドゴール空港は4時以前に到着してはいけないがゆえにこんなことが行われているらしい。だから実際のフライト時間は普通のパリ直行便と一緒。機内ではほぼ寝て過ごす。早朝着なのでそれで問題なく時差問題はクリアされる。その後乗り継いでジュネーブへ。フェスティバルの送迎バスを予約していたが、スイス側とフランス側のどちらのロビーに受付があるのかを忘れてしまう。アヌシーに行くのだから当然フランス側だと思いそちらに向かったが違った。焦りから挙動不審になり税関で止められた。

参加を決めたのは直前だったのでホテルが空いておらず、学生部門入選の和田さんに頼んで、学生コンペ作家が泊まるインスティトゥート・ルーラルにねじこんでもらう。会場から遠いが宿泊料が段違いに安いのでまあいいや、ということで。去年の『オーケストラ』組の話から2人部屋だと思っていたのに、チェックインして部屋に入ってみると5人部屋。狭い部屋に二段ベッドふたつと普通ベッドひとつが無理やり押し込んである。同部屋は和田さんの他に広島にコンペインしているTrain of Thoughtsの作家をはじめとした、イギリスのボーンマス芸術大学の学生作家3人。

ザグレブにも参加している和田さんの到着は夕方なので、朝食(コーンフレークとパンとヨーグルトと果物)を食べて少々休憩した後、さっそくメイン会場のボンリューへと向かう。歩けば40分ほどかかるが、インスティトゥート近くのバス停から4番のバスを使えば10分ほどで到着する。バスの値段は1ユーロ10セント。フェスティバルのパスがあればバスのパスが5ユーロほどで買えるらしい。帰りは毎日25時すぎだしバスは終わってるだろうからパスは買わなくていいやと思ったのだが、25時代にも深夜バスがあるということを後ほど知る。それならばパスを買ってしまった方がいいのかもしれない。(来年以降参加する方のためのメモ書き。)

会場のウェルカムルームへと向かい、まずはパス(バッジ)をピックアップ。顔写真つきのパスとネット予約済みの上映チケットがもらえる。(コンペとパノラマの上映については、予約チケットが必要なのだ。特別プログラムはパスさえあれば自由に入れる。)その後プレスの受付デスクに行き、カタログ4冊(最低限の情報が載った薄いものと作品・プログラムの詳細情報が載った厚いやつ、MIFA(見本市)のぶっといカタログとMIFA会場の地下で開催されるCreative Focusの冊子)とフェスティバル・バッグ(バッジがたくさんついてる)をもらう。

ウェルカムルームが異様にすっきりしていると思ったら、今年から作家別のポストが廃止されたらしい。アヌシーはカタログに作家の顔写真をのっけないし、学生コンペは作家挨拶さえない。ただでさえコンタクトが取りにくい映画祭だが、その傾向がさらに強まっている。ホームページ上の個人ページにメールのフォームを導入することで作家の個別ポストのかわりにしようとしたらしいが、そのことは作家に周知されていない。そもそも学生コンペの作家が宿泊するインスティトゥートはネットが使えない。会場には数台のパソコンが用意されているが、そこで毎日チェックしろというのは酷な話だろう。学生作家からは、なんのために会場までやってきたのかわからないという声がちらほらと聞こえた。俺自身もLebensaderのアンジェラ・シュテファンと連絡を取ろうと思っていたので、いきなり出鼻を挫かれた気分。アヌシーには公式のパーティーがほとんどないので、作家との交流のチャンスはほんとうに限られてしまった。再考を望む。

(1)に続く

土居

        2010-06-06        広島2010コンペ作品発表

広島のコンペ選考結果が発表されています。2年に一度ということでザグレブと似た感じになるのかな?と思っていたのですが、結構違いました。

今年の話題作と僕が勝手に思っているアンドレアス・ヒュカーデLove and Theftがまず落ちててびっくりしました。(出してない?)この作品でアニメーターをしているアンジェラ・シュテファンLebensaderはしっかり入ってます。(2008-2009ベストでこの方については触れております。rising new starでしょうね。)この作品が(おそらくですけど)35mmで観れるのは大きいですよ。

ハーツフェルトは基本的に広島と非常に相性が悪いのでI am so proud of youが入らないのはまあそんなもんかという感じですが、オライリーPlease Say Somethingが落ちたのには愕然としました。(広島での上映に備えて日本語字幕版作ったのに……)そんなこともあるんですね。バスティアン・デュボアMadagascarも落ちましたし僕が2008-2009ベストでトップに挙げた作品のほとんどは広島の大会場でお目見えする機会を失ってしまいました。彼ら三人とも友人なのでそこらへんを考えても痛い。いやはや、コンペ選考というのは難しいものです。

プリート&オリガ・パルン『雨のダイバー』はきっちり入ってきました。大物でいえば、他には、シュヴィッツゲーベルの幽玄的な新境地Retouchesもまた順当に。フェレンク・カーコやコーデル・バーカー、マーヴ・ニューランドらの巨匠群も入っています。

中堅どころも結構多いです。
セオドア・ウシェフはDrux FluxとLipsett Diariesが二本ともコンペイン。両方とも音が非常にかっこいい作品です。大会場だと映えるんじゃないですかね~イザベル・ファベMixed Bagとクリス・ランドレスThe Spineは個人的には彼らのキャリアのなかではあまり良い作品とは思えませんが、入ってます。プリート・テンダーの最狂作Kitchen Dimensions、イメフォフェスでもやりましたけど、フィルムで観たら全然違いますから。楽しみ楽しみ。

伸び盛りの期待の若手が良作によってきっちり入ってきたのは嬉しい話ですね。
大山慶『HAND SOAP』、和田淳『わからないブタ』、水江未来『JAM』といった国際コンペでもお馴染みになりつつある日本の若手。4大会連続コンペインと広島に非常に愛されているマルコム・サザランド(Forming Game)。韓国からはヂョン・ユミDust Kid。まだきちんと作品を観たことがないんですけど、ジョゼフ・ピアースA Family Portraitはとても面白そう。ウラジミール・レスチョフも何気に広島に愛されている作家です。シモーネ・マッシも新作を引っさげて2006年広島以来のコンペイン。

映画祭シーンではほぼ新人ですが、これから常連になる可能性を秘めているところを挙げれば、先ほども名前を挙げましたがLebensaderのアンジェラ・シュテファン、I Was Crying Out at Life, or for Itのヴェルジーヌ・キートン、LuisとLuciaが国際シーンを賑わしている立体アニメーションの新星クリストバル・レオンたちの新作The Smaller Roomも入ってます。良作Emplyomentのサンチアゴ・グラッソにも注目です。銀木沙織、北村愛子といった藝大勢も面白い存在です。

他にはどこらへんをピックアップしておこうかな……
The Bottleはコヴァリョフ好きにはたまらない作品だと思います。伝え聞く話によると、監督たちはコヴァリョフのことを知らないらしいですけど……Inukshukも大画面35mmで観ると楽しいと思いますよ。

BluやLost and Foundも受賞が続く作品です。

マリーナ・ロセットやユリア・ルディツカヤはクロク友達なので広島で再会できそうなのが嬉しいです。ロセットは新作の一部のみ記者会見で観ましたが、あいかわらず良い感じに力の抜けた感じで、結構期待できるかもしれません。

立体アニメーション好きはThe Drawer and The Crowも要チェックです。結構珍しい感触の作品ですので。

開催が近づいたら、前回のように全作プレビューをやりたいと思います。

とりあえずはこのへんで。

明日からはアヌシーに行ってきますので。
ネット環境が整っていたら、去年のように速報レポートをアップしますね。

土居

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