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        2010-12-31        2009-2010年ベスト(4):長編

今年はいくつかの素晴らしい長編アニメーションと出会えましたのでピックアップ。

イリュージョニスト』(シルヴァン・ショメ)
The Illusionist (Sylvain Chomet)


illusionist

これは紛れもない傑作です。魔術・驚異としてのアニメーションが力を失って随分と長い時間が経ってしまった気がします。(あれだけ素晴らしい『ポムネンカ』がサラッと流されてしまった現状をどうしましょう?)アニメーションがこれだけ「当たり前」となった時代なのだから、仕方ないことなのかもしれません。今さらそんなこと言われてもね、という感じなのかも。タチの遺稿を原作として作られたシルヴァン・ショメのこの新作長編は、なんというか、魔術としてのアニメーションに最後の別れを告げるかのような、そんな作品となっているように思えました。時代遅れの奇術師と、彼の奇術を魔法だと信じる田舎育ちの純粋な少女の物語。奇術師が背負う極めて緩慢とした、歴史性を担った時間と、少女が女へと成長していく残酷なまでに素早く流れゆく時間。最終的には違う道を行かざるを得ないこの2つの異なる時間がマッチする一時を描く物語です。魔術にはタネがあるわけですが、本当の魔術とはそれを分かっていたとしても、それでもなお驚きを与えてくれるものだと思います。『イリュージョニスト』は、年老いて人気もなくなった奇術師の姿を通じて、魔術の時代の終わりをこれでもかと見せつけながら、最後、その驚異を再び蘇らせるのです。映画の終盤に誰にも目撃されぬところで起こるちょっとした奇跡に息を呑みます。もちろんこれだったタネがある。仕掛けがある。仕掛けは画面上に映っている。それがトリックだと分かっている。それでもなお、驚異がある。この時代に、魔術としてのアニメーションの持つ原初的な輝きを、このたった一瞬でも取り戻すことができたショメは実に素晴らしい仕事をやってのけたといえます。魔術にはタネも仕掛けもあることをみなが認識してしまい、そこを問題としなくなった時代。つまり、みながアニメーションに対して「大人」になってしまった時代の今だからこそ、最も威力を発揮する作品です。2011年日本公開です。万人必見。

緑子 MIDORI-KO』(黒坂圭太)

midori-ko

小さな頃、たとえば東映マンガまつりとか、まあ、ディズニーとかでもいいんですけど、アニメーションを観ることで異様なドキドキ感を味わったことってあったと思います。『イリュージョニスト』の話とちょっとかぶってますけど。普通の映画やドラマと違う、なんとも名状しがたい、不思議なことが起こっているなあ、という感覚です。世界がまだまだ新鮮だった頃のアニメーション体験で得られるもの。それを与えてくれるのが黒坂圭太待望の長編『緑子』です。ノルシュテイン『外套』と並んで、「いつ完成するんだよ?」アニメーションのトップ2だったわけですが、ついに完成したのです。予告編には「現代の偽善を笑う」というフレーズが使われていますけど、ほんと、あらゆる虚飾が取り払われて、これを見終わった後にはナチュラルな気分になれます。身体の奥底の部分が解放されるというか。限りなくユニークな長編です。現代のカーニバル!!

Goodbye, Mister Christies (Phil Mulloy)

goodbyemister

『緑子』と同じく個人長編作品からもう一本。フィル・ムロイの長編第二作Goodbye, Mister Christiesは、観ていて恐怖を感じました。タイトルからお分かりのように、究極のミニマル長編The Christiesの続編です。前作に比べれば切り絵のバリエーションは増えてますけど、基本路線は同じです。黒シルエット、単純な背景で展開される、コンピューター・ボイスによる無限の会話劇です。今作ではミス・クリスティーがフランス人船乗りの魔力の支配下に置かれて不倫をし、ミスター・クリスティーもまた、犬のバスターがテレビ取材を受けている最中にまたしてもフランス人船乗りの魔術によってイチモツを晒すことにより、全世界的な有名人となります。彼の人格崩壊は、世界の崩壊と運命をともにします。なんというか、この長編って何なのでしょうか? 普通、長編って、多くの人が関わったりたくさんのお金が絡んでくるわけで、やはりなるべく多くの人間に向けて作られるわけなんですけど、ムロイのこの長編はどうなんでしょう? 個人制作の長編はSita Sings the Bluesとかプリンプトンとかありますけど、そういった作品だって、やはり多くの人に見てもらうための努力を制作中・制作後と行っているわけですけど、じゃあこの長編はどうなんでしょう? 特に誰に向けて作られたものではないもののように思えたのです。恐怖を感じたのはそこです。目的がわからない……悪ふざけにしてはやりすぎな気がする……内容自体も背筋の凍る笑いを提供してくれます。UP & DOWN, UP & DOWN...

ここまでの三作はすべてオタワの長編コンペに入っていたものですが、
もう一本、注目すべきものがありました。

Gravity Was Everywhere Back Then (Brent Green)

gravity

独学のアニメーション作家ブレント・グリーンによる、全編ロトスコープの長編です。交通事故によって運命的に出会ったレオナルドとメアリーの夫婦。しかしメアリーはガンに冒される。夫は、妻を救うために、自宅の庭に巨大な治療装置を建てはじめます。「そのとき、重力は偏在した」。タイトルにもなっているこのセリフは、妻の死後も治療装置としての塔を建てつづけたレオナルドが、その塔から落下し、死を迎えたときにつぶやかれるものです。重力に逆らって塔を天へと伸ばしつづけること。この行為が象徴するように、この映画は、運命(gravity)に抵抗するという、負けることしかありえない戦いを一生涯続けた男の、泣きの物語です。質的にはもちろん高くないですが、ロトスコープのコマとコマの間から滲み出るエモーションがすさまじいです。アニメーションにもローファイという概念があてはまるのだという発見が、この映画にはあります。この長編をアニメーション映画祭でピックアップしたオタワはやっぱりエラい。

これで今年のベストについてのエントリは終わろうと思います。
他にも、選外佳作的にいくつかの作品について書こうと思ったのですが、もう年が終わってしまうこともありますし、これから執筆にとりかかるフェスティバル・レポートでもカバーできるだろうということで、省略します。いくつか作品名だけ挙げておくと、長編ではウェス・アンダーソンの初アニメーション長編『ファンタスティック・ミスター・フォックス』(これも劇場公開が決まったようですね。人形に対する乾いた愛と距離感が素晴らしい映画でした)、短編だとブラザーズ・クエイの新作Mask(クエイの作品でナラティブが機能した希有な例)、あとは不当に評価が低いように思える水江未来『MODERN』(素晴らしく先鋭的な抽象作品だと思いました)なんかについて本当なら書きたかったのですが、また来年ということで。

来年は、このブログでも紹介したいくつかの長編が一挙に日本公開となるようで(『メアリー&マックス』『イリュージョニスト』『ファンタスティック・ミスター・フォックス』……『緑子』やシュヴァンクマイエルの新作長編も恵比寿映像祭で観れます。)、長編がちょっと盛り上がる年になりそうです。短編では、山村浩二の新作が完成し、ウェンディ・ティルビー&アマンダ・フォービスの新作も完成したという噂をききますし、ドリエセンも来年が完成目標といってましたし、NFB作品が盛り上がりを見せそうな気配です。タレント揃いの藝大二期生の修了制作も楽しみ。広島はないですけど、来年もまた日本で、インディペンデント・アニメーション・シーンが盛り上がるといいですね。

それではよいお年を。

土居

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