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        2007-10-02        ザクセン州とアニメーション映画への情熱(1)

今日はドイツ文化会館での「ザクセン州とアニメーション映画への情熱」に行ってきました。

お客さんは全然入っておらず寂しい限り。ICAFの盛況とかイメージフォーラムフェスのアニメーションプログラムの大入り具合は一体なんなのでしょう。無料で貴重な短篇アニメーションが観れるのに。しかもDVDまでもらえちゃいましたよ。わたし二枚ももらっちゃいましたよ。アニメーションのDVDを。いいでしょ。みんな来ないから。もう。しかし、国や自治体が絡むとお金がたくさん出るのですなあと実感しました。ドイツ・アニメーション研究所も公営で短篇アニメーションのアーカイブとか作ってますからね。日本もつくりなさいよ。短篇作家を支援しなさいよ。上っ面だけアニメーションアニメーション言って。もう。一方でこんな素晴らしいイベントを開いてくれるなんて、ザクセン州は最高だね!ザクセン州とザクセン州がアニメーション映画に賭ける情熱は素晴らしいです!ザクセン州ありがとう!

前半はドイツ・アニメーション研究所のコレクションからメルヘン特集。"赤ずきん"(1976、オットー・ザッハー)は切り絵アニメーション。もっさりしたグラフィックスタイルの暖かみと単純なパーツでしっかり本質を掴んでいるデザインが魅力的。小さいものが動くときに感じてしまう愛おしさに溢れた作品。基本的な引きと、キャラクターの思い切ったアップの繰り返しが根源的なリズムを作り出す。それにしても赤ずきんって変なお話ですね。"灰かぶり姫"(1985、ホルスト・タッペルト)は影絵アニメーション。ドイツで影絵といえば当然ライニガーの名前があがるけれども、ライニガーよりももっとむっちりした影絵。デザイン性は異様に高く、手の形やポーズの優美さには吐き気を覚えるほど。お妃を探すには異常に幼すぎるように思える造型の王子様とそれには釣り合っているシンデレラ。なんだか変な気分になりました。"美女と野獣"(1976、カティア・ゲオルギー)は人形アニメーション。野獣のデザインが「怪奇象人間」という感じのグロさ。毛が中途半端に生えたりしていて本当に気持ち悪い。モノの動き具合は、さすがポルターガイストの国ドイツと言ってしまいたいほど。チェコみたいな温かさは微塵もなし。美女もアンドロイドのように地面を滑るように平行移動する。だが光や水のきらめきには息を呑む。原作でも指輪を使って瞬間移動とかするのだろうか。不思議展開満載。"ルンペルスティルツヒェン"(1985、ペーター・ワシンスキー)は日本では「がたがたの竹馬小僧」で知られたお話です。知らないですよね。これは人形劇。数人の聴衆が何かに導かれるようにしてゾンビのように生気を失って歩いていくと変な若者が草原と森の境あたりで人形を携えてお話を語りはじめる。なんだかすごいオープニングだなあと思ったら中身もすごかった。光と影の表現が凄い。カメラワークも緩急自在。人形劇がエモーショナルなのは常に浮いているからでしょうか。自分で動いている感じと明らかに吊るされている感じが微妙なバランスで、動いていなくてもハラハラする。話の内容も凄いが、長くなりすぎそうなのでプリート・パルン論を書くときにでも。

後半のプログラムはドイツ短篇映画協会選。
"子ウサギ"(2006、アンドレアス・ヒュカーデ)はなんとも評価しがたい出来。高品質なんだけど、"We lived in grass"で圧倒的だった手描きによる背景や質感のアニメートがコンピュータに任せられている。弾力や重さの表現や、ウサギが肉になっていく描写が暴力的なまでに無駄がないところは素晴らしいのだが……前二作とテーマは変わらないと思うが、モチーフの象徴性に遊びがなくなった印象。そういう意味では、まるでパルンの近作のようでもある。"We lived in grass"の各種モチーフには過剰さがあった。裏読みしないでも納得させられてしまっていた。それでも本プログラム一番の良作であったことは間違いない。"窓の絵"(2007、ベルト・ゴットシャルク)は8mmフィルムがアニメートされていく実験映画文脈寄りの作品。窓を映すフィルムが何本も重なって、一つの風景を作り出す。夜の訪れがわかる。窓の奥には何らかの行為を行う人間の手が。"氷欲する人"(2003、アッラ・チュリコヴァ)は砂・木炭画を使っているらしいが、せっかく可塑性ある素材を安易にデジタル処理していて台無し。運動に対する感性に欠けている。止め絵をヴァーチャル・カメラの滑らかな動きでズームしたりズーム・アウトしたりするの禁止。ソフトで動きをオートマチックに付けてしまう人の多さには辟易する。「アナログ原理主義か」とか言うなよ。あらゆる作品に同じ質の動きが現れてしまう気持ち悪さにもっと敏感になった方がよい。人はそれぞれ固有のリズムをもっているのだから。動くものに対する感性を失うことは、世界に対する感性を失うこと。動けばいいという考え方はやめましょう。"ビデオ3000"(2006)や"僕は全て"(2005)みたいな「~という点で現代社会を告発しているのである」という作品も禁止。クリシェを繰り返しているだけなので。"ベルントと彼の人生"(2006、ヤン・ペーター・マイヤー)はおおらかなユーモア感覚にあふれたピクシレーション作品。学生作品プログラムに一本あると嬉しいタイプの作品。何も考えずともニヤケてしまう。"458nm"(2006)はもう見飽きた。諸悪の根源のような作品。有機体と機械を融合するネタはもう禁止。いつの時代の感覚だよ。変なシリアス音楽も禁止。"ミスターシュヴァルツ、ミスターヘイゼンとミスターホルロッカー"(2005、シュテファン・ミュラー)は偶然の重なりでカオスな展開になる系統のスラップスティック・アニメーション。この系統って、ダイナミックになるように思えて実は予定調和的なものが多い。すべてが厳密な因果関係で成り立っているから。この作品はドラッグのラリッた描写の過剰さでそこから抜け出している。自然と『ダンボ』の「ピンクの象」が思い出される。つまりある種の本質をついているということ。

文体が乱れていてすいません。試行錯誤中なんです。一人称に何を使うかも含めて。

明日もありますからお暇な方はどうぞ。

京都のICAFの特別プログラムはこの特集からの傑作選なんでしょうねきっと。

土居

コメント

アンドレアス・ヒュカーデ

個人的には、アンドレアスの絵に対してどうも違和感があり(The Animation Pimpやオタワ・ポスターのイラストは好きですが)、ご本人とも一度、審査で一緒だったのだが、やはり自分とはどうもタイプが違う、友達になりにくい人でした。これは相性とでもいうのでしょうか。
その時『カロとピヨブプト』を見て、こういう子ども向けのアニメーションが作りたいんだ、と話していて、その後実現した彼の子ども向けアニメーションは、"Ring of Fire"よりデジタル彩色でフラットになっていた。
"We lived in grass"も手塗り彩色の過剰さが全面に出ているが、ベースになっているアニメート自体は、クリス・ヒントンの様に大変器用で、アナログな力は、もともと自身の指向した物ではなかったのかと感じてします。
山村

"The Runt”では構図が安定してしまったのもがっかりしました。段々と観念の図像化になっているような。近日アップのペトロフの座談会でも同じ話になりましたが、本人の目指す方向がアニメーション自体の魅力とは違う方向に向かってしまうのは残念なところですね。それでさらに面白くなっていればいいんですが、だいたいそうではないですね……
本文中にも書きましたが、デジタルは異なる人の作品間に同じ質のものを蔓延させてしまいます。(アナログ時代には絶対に起こりえないことですね。)フィル・ムロイのようにちゃんと考えて使っている人はいいのですが。アニメーションがコマ間のインターバルを自分で設定しなければいけないものであるということの意義についてもっと考えてくれてもいいと思うのですが。残念です。

いつも読んでます!

いつも土居さんのレビュー楽しみに読ませてもらっています。ほんとは上映を見てレビューを読めるといいんですけど、レビューだけでも刺激になります。
個人的にこういう柔らかい文体もいいですね!

今日のドイツ文化会館での上映では、「岸辺の二人」という邦題でも知られる「父と娘」や、「年をとったワニ」DVDにセレクトで入ってるギル・アルカベッツさんの作品、あとTDKのDVDのイベントで上映されてた「ファーストフィルム」なども上映されるんですね!

ありがとうございます。刺激になっているのはうれしいです。これからも頑張ります。文体に関しては本当に試行錯誤中ですが、おそらくもっと柔らかくなっていきそうな気がします。

今日の更新のための良いイントロダクションもありがとうございます。匿名希望さんの書かれたとおりです。これからまた書きます。

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